マーケティング理論

制御焦点理論の内容と、マーケティングへの応用例を解説!

この記事は、下のような制御焦点理論に関する疑問を持つ方におすすめです。

こんな方におすすめ

  • 「心理学分野の理論である制御焦点理論の内容を知りたい!」
  • 「制御焦点理論はマーケティングに応用できるときいたことがあるけど、具体的にどうやるのか知りたい!」

マーケティングを専門に研究するものの立場から、「制御焦点理論の内容」「制御焦点理論のマーケティング分野への応用方法」をわかりやすく説明します。

10分間で、制御焦点理論とマーケティングとの関係については、網羅することができるはずです。

 

制御焦点理論とは?

制御焦点理論(英語ではregulatory focus theory)とは、「人間は、目標を達成するうえでの焦点状態(何を重視しているか)の違いによって、行動が変わってくるということを主張する理論です。

Higginsさんという心理学分野の研究者が提唱しました。

具体的には、彼は、焦点状態には、促進焦点(英語ではpromotion focus)予防焦点(英語ではprevention focus)という2種類があると主張しました。

 

促進焦点と予防焦点とは?

めちゃくちゃ簡単に説明すると、目標を達成するうえで、

促進焦点=ポジティブな結果を得られるかどうかに注目する

予防焦点=ネガティブな結果を避けられるかどうかに注目する

という違いがあります。

 

もう少し話を分かりやすくするために、ダイエットを例に挙げます。ダイエットをするという目標を達成するうえで、促進焦点の傾向が強い状態の人は、「健康な体を手に入れる」「モテるようになる」といったポジティブな結果が得るために努力する一方で、予防焦点の傾向が強い状態の人は、「太っていると馬鹿にされる」「病気になってしまう」といったネガティブな結果を避けるために努力するのです。

 

促進焦点と予防焦点の関係

また、意外と知られていないのですが、完全に促進焦点の人、あるいは完全に予防焦点の人というのは存在せず、人間は、促進焦点と予防焦点の両方の状態を併せ持っています

ある人がダイエットをするうえで、一番重視するのが異性にモテるのかどうか(促進焦点状態)であっても、病気になってしまわないようにしよう(予防焦点状態)という気持ちも少なからずは持っているはずなのです。

 

さらに、2種類の焦点状態のうちどちらかの傾向が強い状態の人間でも、外部の刺激によって、もう片方の傾向が強い状態に反転することもあり得ます。

モテるかどうかを一番重視していた人(促進焦点状態の傾向が強い人)でも、医者から肥満に関係する病気の恐ろしさを説明されたら、第一に病気にならないようにしよう(予防焦点状態の傾向が強い人)と考えるかもしれないってことです。

 

制御焦点理論のマーケティング分野への応用例

これまで説明してきたように、促進焦点の人と予防焦点の人では、考え方が異なっており、何か行動を起こすときの動機も異なります。

ということは、この焦点状態の違いを考慮して、マーケティング(特に消費者へのコミュニケーション)活動を使い分けることができるかもしれません。

つまり、

ココがポイント

促進焦点の人には、「この製品を買ったら、成功する!」「これであなたもこうなれる!」といったポジティブな結果の獲得を訴求する一方で、予防焦点の人には、「この製品を買ったら、こんな失敗が防げる!」「これであなたの悩みも解消!」といったネガティブな結果の回避を訴求することが有効であるということです。

 

こうした考えのもと、2000年代くらいから様々なマーケテイング研究者が、マーケティングと制御焦点理論の関係について、研究してきました。

 

マーケティングへの応用①―自社製品のタイプによる訴求方法の使い分け

消費者は、製品のタイプや特徴から、制御焦点を形成することがあります。

例えば、Zhouさんたちの2004年の研究は、「株式は大きな利益の獲得をイメージさせるため、促進焦点を形成する傾向がある一方、退職年金投資信託は将来の損失の回避をイメージさせるため、予防焦点を形成する傾向がある」と主張しました。

他にもMouraliさんたちの2007年の研究は、「ワインやレストランサービスは促進焦点、日焼け止めやマウスウォッシュは予防焦点と関係している」と主張しました。

このように、製品のタイプによって、消費者は、その製品に対する焦点状態を変えているようです。

利益の獲得をイメージさせるような製品=促進焦点型の訴求方法

損失の予防をイメージさせるような製品=予防焦点型の訴求方法

 

マーケティングへの応用②―消費者の感情による訴求方法の使い分け

消費者は、その時の、自身の感情によって、有効な訴求方法が異なると主張する研究があります。

Bosmansさんたちの2005年の研究は、「消費者が上機嫌で朗らかな感情の時は、促進焦点型の訴求方法が、冷静で落ち着いた感情の時は、予防焦点型の訴求方法が有効である」と主張しました。

消費者が朗らかで明るいときに見る可能性が高いとき(スポーツ観戦・バラエティなどのCMやテーマパークの広告等)=促進焦点型の訴求方法

消費者が冷静なときに見る可能性が高いとき(朝の時間帯のCMやニュースのCM)=予防焦点型の訴求方法

 

マーケティングへの応用③―消費者の文化的背景による訴求方法の使い分け

消費者は、どこの文化圏出身かによって、有効な訴求方法が異なると主張する研究もあります。

Brileyさんたちの2006年の研究は、「西洋圏(北米など)の消費者に対しては、促進焦点型の訴求方法が、アジア圏(中国など)の消費者に対しては、予防焦点型の訴求方法が有効である」と主張しました。

なんとなくイメージでも我々日本人は、予防焦点(リスク回避)型の人が多いような気がしますね。

西洋圏でコミュニケーション活動を行うとき=促進焦点型の訴求方法

アジア圏でコミュニケーション活動を行うとき=予防焦点型の訴求方法

 

マーケティングへの応用④―購買時点との時間的距離による訴求方法の使い分け

ある研究では、消費者は、購買時点を近く感じているか遠く感じているかによって、有効な訴求方法が異なると主張されています。

具体的には、Mogilnerさんたちの2008年の研究は、「消費者が購買時点を遠く感じている場合は、促進焦点型の訴求方法が、購買まで時間があると感じている場合は、予防焦点型の訴求方法が有効である」と主張しました。

これは、購買が近いとネガティブな結果など予測する一方、購買が先のことだとポジティブな結果ばかりを予測するためだそうです。

確かに、どんな予定でもまだまだ先のことだと、楽しいことばかりを想像しがちですが、いざ予定が近づいてくると、なんか行くのめんどくさいなとか細かいネガティブなことを心配しがちになってしまいますね。

まだ発売が先の予定の新製品や高級で消費者になじみのない製品=促進焦点型の訴求方法

すでに発売している製品や誰でもすぐに買えるような製品=予防焦点型の訴求方法

 

まとめ

これまで説明してきたように、制御焦点理論は「人間は、目標を達成するうえでの焦点状態(何を重視しているか)の違いによって、行動が変わってくる」ということを主張する理論です。

重要なのは、促進焦点と予防焦点の人で考え方・行動の動機が異なるということです。

ココがポイント

促進焦点=ポジティブな結果の獲得を目指して行動する(例えば、「モテるために」痩せる)

予防焦点=ネガティブな結果の回避を目指して行動する(例えば、「容姿を馬鹿にされないために」痩せる)

 

そして、この促進焦点と予防焦点の違いによって、マーケティング活動の使い分けを行うことによって、効果的に消費者にアプローチすることができるわけです。

是非、制御焦点理論の考え方を、企業のマーケティング活動に生かしてみてください。

  • この記事を書いた人

サッポロん

都内の大学院で、マーケティング、特に消費者行動論(さらにその中でもeWOMというオンライン口コミ行動)に関する研究をしています。「日本は、マーケティング後進国だ」という野次を跳ねのけたいです。

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